院長のひとりごと

 

オンライン診療について           2021.8.14

6月18日いわゆる「骨太の方針2021」が発表されました。その中で大いに気になったのが初診からのオンライン診療の恒久化です。
これでまでオンライン診療は患者の状態を把握できているかかりつけ医が実施でき初診は必ず対面診療と定められていました。また発熱時や腹痛など通常と異なる状態ではオンライン診療での対応はできず対面診療で診察したうえで検査や処方が可能とされています。しかしコロナ禍では医療機関への通院が思うようには出来ないことから政府は特例的、時限的に初診からのオンライン診療を認めました。その一時的な対策を今後は初診から可能とするように見直しをするということなのです。
かかりつけ医以外でも事前に患者の情報が把握出来れば初診から可能となると、これまで全く見知らぬ人をモニターの画面のみで診察することになります。これは対面診療に比べ情報が大幅に不足、限定されることが避けられず疾患の見落としや重症度の判断の過ちをもたらします。また状態悪化時に初めて対面するということは避けられず、これは診療する側にとって恐怖でしかありません。また悪意を持った「なりすまし」の可能性すらあります。しかもオンライン診療の責任は原則医師側にあり「これで文句を言わずオンライン診療をしろ」というのは同意できません。
保険診療の質や安全性を担保するためにはオンライン診療はあくまで対面診療の補完にとどめるべきです。また政府はかかりつけ医がいない若い健康な世代などの受診機会を確保するための対策でもあると言いますが、気軽に受診出来る様な労働環境を整備・保健指導を徹底する方が先でしょう。
医療は原則対面で行うべきです。モニター画面で診療が完了するというのは本来の診療とはいえません。

 

新型コロナ感染症の現状とワクチン    2021.4.29

4月5日から大阪、宮城、兵庫で始まった「まん延防止等重点処置」は何の効果もなく第4波に突入、4月25日から東京、大阪、京都、兵庫で3度目の緊急事態宣言の発出です。青森市でも障害者施設で大規模クラスターが発生、それに関連した複数のクラスターが本町の飲食店で発生し今も続いています。市は27日から本町の指定エリアで酒類を提供する飲食店を対象に時短営業を要請しました。普段から飲み歩きの習慣はコロナ禍でも変えることができないようで飲酒を伴う会食やカラオケの危険性を思い知らされます。

4月12日から介護施設入所者のコロナワクチン接種が始まりました。ただし老健など大規模な施設での実施でグループホームなどの入居者は対象外、介護スタッフも未接種です。入所者の移動は自ずと限られ感染の危険は極めて少なく感染するとすれば介護スタッフからです。従って入所者と介護スタッフは同時に、またはスタッフの優先接種にすべきです。このような施設でのクラスター発生はなるべくしてなったと言わざるをえません。

5月から医療機関での個別接種と集団接種が始まります。ところが4月になっても接種する側の医療従事者のワクチン接種ができていません。接種が済んでいるのは公的医療機関のみで民間の医療機関では全くできていないのです。これはまずいと思ったのか厚労省は高齢者用ワクチンの一部を医療従事者に転用することにしました。接種がいつになるかと気をもんでいたら突然4月25日接種の通知がきました。当日は日曜で在宅当番のため9時から午後1時までの外来診療でしたが早々に済ませてきました。当院の看護師2名、事務職1名も接種しましたが接種部位の軽い痛み以外の副反応はありません。
手洗い、うがい、3密を避けることは当面続きますが、まず感染の可能性が高い機会を回避することが最も大切です。

 

「2040年問題」について   2020.11.15

 全ての団塊の世代が後期高齢者になり医療・介護費が急増するというのがいわゆる「2025年問題」です。その問題が深刻化するのが高齢者の実数がピークに達する2040年前後と言われ新たに「2040年問題」といわれています。

2040年頃には人口減少が進み大都市圏以外では医療需要の縮小がはっきりしてきます。その一方で高齢者の人口は増加し65歳以上は3935万人のピークに達します。特に75歳以上は2239万で全人口の20%に達します。外来の医療需要は2025年をピークに減少しますが入院医療需要は2040年以降横ばいと予想されています。ただし地域によって事情は異なります。青森地域では2015年以降ずっと人口が減り続け外来、入院ともに医療需要は減少しますが介護需要は2025年までは増加し2030年以降は減少します。これに対し神奈川・川崎南部地区では人口は横ばいのまま、医療需要、介護需要も増加し続けると予想されます。人口減少、少子高齢化の影響を受けるのが産科と小児科です。小児科の患者は2005年から2014年の10年間で23.6%、入院患者は15.9%減少しています。さらに小児人口(14歳以下)は2015年の1589万人から2040年には1194万人まで減少し小児患者が減っていきます。一方、高齢者の入院需要は2040年まで増加しその後は横ばいと推定されます。肺炎や心疾患、脳血管疾患、認知症の入院が増え急性期より回復期、慢性期の医療の比重が大きくなります。
国は地域医療構想という名目で病床削減を進めています。また中小規模病院は患者の減少で経営は厳しく病棟の縮小や診療科に陥っていて病床はますます減っています。この解決策として政府は中小医療機関の統合と遠隔診療、在宅診療の拡大・強化を進めるようですが、そう簡単な話ではありません。人口減少、少子高齢化で医療需要は大きく変わり医療システム自体も大きく変わることになりそうです。

 

新型コロナウイルスについて思うこと   2020.7.16

 昨年12月中国武漢から世界に広がった新コロナウイルス感染症ですが我が国でも感染者が急増、4月16日緊急事態宣言が発令されました。三密を防ぐ新しい生活様式や営業自粛の効果は明らかで新規感染者は激減、5月25日には宣言が解除されました。外出や営業が再開されるとゆっくり新規患者が増加、7月10日には東京で243人とこれまでの最高を更新しました。ウイルスは自ら動けません。ウイルスを運ぶのはヒトです。接触を8割減らすこと、三密を防ぐことは感染予防の正攻法といえますが経済活動の停滞は避けられず政府は緊急事態宣言を再度の発令はしない様です。

これまでヒトに感染するコロナウイルスは普通の風邪ウイルスでとるにたらないものでした。しかし新型コロナウイルスは、これまでのウイルスとは大いに違います。多くは無症状や軽症者ですが一部では急速に進行し肺炎など併発、ECMOなどを使っても致死的状態に陥ります。重症肺炎の原因は肺胞という酸素を取り入れる肺の小さい組織の表面の細胞(内皮細胞といいます)が傷害され肺胞周囲の組織液が肺胞内にしみ出して肺自体が水浸しになるためです。このような変化は他の臓器の血管の内腔の細胞(内皮細胞といいます)にもおこりその結果血栓が形成され臓器の機能不全をもたらします。若年者でも脳梗塞を起こすのはそのためです。この原因はウイルスに対して免疫細胞が過剰に反応しサイトカイン(細胞から放出され様々な働きをもつタンパク質)を大量に放出されるためで、これをサイトカインストーム(ここでは免疫細胞の暴走)といいます。このサイトカインストームは高齢者ほど頻度が高く高齢者の死亡率が高いことと一致します。

 以上から考えられる治療としてウイルス自体を抑える抗ウイルス剤、さらにサイトカインを押さえる免疫を調整する薬剤の2種類が必要になります。インフルエンザでのタミフルのような特効薬が出るにはまだ時間がかかるため既存の薬剤で対応する以外にありません。残念ながら抗ウイルス剤のアビガン、レムデジビルも期待されたほどの効果はないようです。また免疫抑制剤のアクテムラやJAK阻害剤のオルミエントはまだ研究段階です。ワクチンの開発も進んでいますがワクチン後に感染した場合に免疫細胞の反応がどうなるのか、サイトカインストームの危険はないかなども含め慎重にならざるをえません。

 国境を越えた多くの製薬メーカーが日夜研究していますがこのウイルスを攻略するにはもうしばらく時間がかかるようです。それまで三密を避ける、流行地域には行かない、手洗い、うがい、マスク、ソーシャルディスタンスを保つといった ” 新しい生活習慣 ” をしっかり守ることが大切になります。

 

ABC検診と胃内視鏡検診が始まります  2020.4.6

昨年末のことになりますが青森市で令和2年度からABC検診と胃内視鏡検診の実施が急遽決定しました。ABC検診は40歳代の偶数歳、内視検診は50歳以上の偶数歳が対象です。また40歳以上のバリウム検診(レントゲン検診)は従来通り出来ます。ABC検診と胃内視鏡検診は県内では弘前市についで2番目の実施になります。
ピロリ菌とABC検診につては前回の ” 病気あれこれ ” のコーナーで解説しています。検診の詳細については今後、市の広報や町内の回覧板などに載ると思いますので少しお待ち下さい。対象になる市民の皆さんにはこの新しい検診を受けていただきたいと思います。

胃がん検診について     2019.12.24

青森県の癌死亡率は高いことはご存じの方も多いと思います。その中でも胃がんは多く胃がんを減らすことがもとめられます。今月の”病気あれこれ”に述べていますが胃がんはピロリ菌の感染が原因であることがわかっています。従ってピロリ菌対策が胃がん対策になります。ピロリ菌感染の有無と胃粘膜に萎縮の程度を同時に判定するABC検診(胃がんリスク層別化検診)を行い未感染者以外には定期的な内視鏡検診を実施するというのが最も効率の良い胃がん検診の方法です。弘前市はすでにABC検診を行っており昨年から内視鏡検診も始まり県内で最も優れた胃がん撲の体制をしいています。青森市は来年度からABC検診と内視鏡検診の導入を検討しています。これが実現すれば将来の胃がんの発症と死亡率を大幅に減少することが期待できます。

 

ホームページを新しくした経緯  2019.10.21

当院のホームページは平成18年8月釜石市の某社に依頼して開設、平成25年に某社の都合で北上市 A*G*L*k 社(以下A社)に変更になり特に問題なく継続していました。
 ところが今年5月更新しようとしたらホームページが見当たらない!慌ててA社に電話して改善を依頼しましたが6月になってもアップなし。再び電話したら ” この電話は使われておりません ” の悲しいメッセージが流れました。だまされました。残念なのはこれまで13年間のデータがすべて消失したことです。ただただ呆然とするしかありません。記事の全てを保存していなかったことが悔やまれます。
A社に何があったかはわかりませんが顧客には最後まで誠実に対応すべきです。もしA社の関係者がこのサイトを見ていたらデータだけで良いので返却をお願いします。




 

病気あれこれ


 

微量ミネラルのお話                 2021.8.14

ヒトの体は多くの元素で構成されています。主要元素とよばれるものが酸素(O),炭素(C),水素(H),窒素(N)です。次いで多いのが準主要元素でナトリウム(Na),カリウム(K),塩素(Cl),カルシウム(Ca),リン(P),硫黄(S)、マグネシウム(Mg)があります。これより少ない元素が微量ミネラルとよばれ1日必要摂取量が100mg未満のものと定義されます。これはヒトの全重量の0.02%にすぎません。微量ミネラルには鉄(Fe),亜鉛(Zn),銅(Cu),クロム(Cr)、ヨウ素(I),コバルト(Co),セレン(Se),マンガン(Mn)などがあります。最近、生活習慣病や老化が微量ミネラルと関わっていることがわかってきています。

鉄はレバー、アサリ、赤身肉、大豆に含まれ欠乏により貧血になることで頭痛、めまい、倦怠感、集中力の低下を起こします。
亜鉛は牡蠣や豚レバー、ごまなどに含まれ欠乏すると口内炎、脱毛、味覚障害、食欲不振を生じます。
銅はタコ、カニ、エビ、牡蠣、大豆に含まれ欠乏症状は髪の毛の色素がぬける、倦怠感などです。
クロムは蕎麦、牛・鶏・豚肉、ホタテに含まれ脂質、タンパク質の代謝異常との関連がわかっています。
ヨウ素は昆布、海苔、イワシ、サバ、カツオの多く含まれ欠乏症状は脱毛、体力低下、倦怠感です。
コバルトは肉類、魚、乳製品に含まれ欠乏すると食欲低下、手足のしびれ、筋肉が萎縮します。
セレンはカツオ、ホタテ、ネギ、卵黄に含まれ欠乏すると脱毛、シミが増えます。
マンガンは海苔、シジミ、生姜に多く含まれ骨粗鬆症との関連が知られています。
これらの微量ミネラルの欠乏の原因は摂取不足や極端な偏食に伴うものです。症状に決定的なものはないため見逃されることが多いと思われます。正しい食習慣を保つことが予防になります。

 

子宮頸がんワクチンの現状     2021.4.29

子宮頸がんとウイルス
子宮頸がんは年間約1万人が罹患し約2800人が亡くなっていて特に50才未満の若い年代で増加しています。95%は性交渉に伴うヒトパピローマウイルスウイルス(HPV)の感染が原因です。HPVに感染してもほとんどは2年程度で自然に排除されますが一部では感染が持続し、その後感染した子宮頸部の細胞に軽い異常(軽度前がん状態)をおこし更に強い異常(高度前がん状態)を経てがんを発症することがわかっています。ただ普通の感染症と異なるのは感染してからがん発症まで数年から数十年かかることです。これはピロリ菌感染と胃がんとの関係に似ています。HPVには15種類ありその中でもHPV16型、18型が65%を占めます。

がん予防にHPVワクチン
ウイルス感染が原因ですからワクチンが発癌を予防できることは容易に理解できます。2009年16、18型HPVに対する2価のワクチンであるサーバリックス、2011年には6、11、16、18型対応の4価ワクチンのガーダシルが発売されました。2013年には小学6年生から高校1年を対象に無料の定期接種が開始されました。しかし、接種後の副反応が大々的に報道され2013年に厚労省は積極的な接種勧奨を中止、8割程度あった接種率は現在1%低下になっています。

HPVワクチンの安全性
HPVワクチンの副反応で問題となるのは“多彩な症状”とされる慢性の痛みや運動障害などです。これについて2016年の厚労省研究班、2017年の厚労省専門部会の検討ではいずれもワクチンとの明らかな因果関係はないと結論しました。しかし厚労省は現在でもワクチン接種の積極的勧奨はしていません。

 HPVワクチンの有効性と将来
最近スエーデンからHPVワクチンにより頸がんの発症リスクが6割減少すると報告され発がん抑制効果が明らかになりました。また今年2月に9価のワクチンのシルガード9が発売されました。これはガーダシルに加え31,33,45,52,58型に対応し88%のHPVをカバーします。ワクチンの1次予防と健診の2次予防でがん死をゼロにすることが期待できます。日本産科婦人科学会、日本小児科学会は厚労省に”積極的な接種勧奨”の再開を求めていますが実現されていません。

 

ヒートショックについて  2020.11.15

 ヒートショックは急激な温度変化で血圧が乱高下することによって起こる健康被害です。温度変化が急激に起こると血管が収縮して失神や不整脈を生じ脳卒中や心筋梗塞を引きおこします。厚労省研究班の実態調査(2013年)では年間19000人が亡くなっていると推計され年々増加しています。ヒートショックは寒い時期に多く、暖房のきいた暖かい部屋から寒いところに移ったときや逆に暖かいところから外に出たときに起こります。最も注意したいのが脱衣所や浴室、夜中や明け方のトイレに行ったときです。外気温が低くなる1月はヒートショックによる入浴中の事故死が増加します。ヒートショックを起こしやすいのは高齢者や高血圧や糖尿病、高脂血症などの動脈硬化が強くなる病気を持っている方です。高齢者は自律神経の働きが低下し温度変化の対応力が落ち影響を受けやすくなり浴槽での溺死は75才以上で特に多くなります。
ヒートショックを予防するには急激な温度変化を抑えることです。脱衣所やトイレ、浴室などに暖房器具をおいて居間や寝室などとの温度差を出来るだけ少なくします。入浴の湯の温度は41度以下、1回の入浴は10分以内にします。また食後1時間以内、飲酒後は血圧が下がるので、この時間帯の入浴は避けます。また高血圧の方はしっかり血圧を下げること、食生活や適切な運動、禁煙など生活習慣の改善も予防につながります。

 

高齢者のてんかん       2020.4.6

 てんかんというと突然けいれんを起こし意識がなくなる子供の病気というイメージがありますが、これは熱性けいれんという病気で一般的なてんかんとは違います。日本でのてんかんの患者さんは18歳未満が17%、18歳から64歳が39%、65歳以上が44%で高齢者が約半数をしめます。多くは高齢になった初めて発作をおこす高齢発症てんかんです。

高齢発症てんかんの特徴

てんかんは脳の神経細胞が過剰に興奮する病気です。突然、意識が消失し口をくいしばったまま、手足を伸ばした格好で全身を硬直するまたは曲げたり伸ばしたりする、呼吸が止まるなど一見してただならぬ状態になります。これは脳全体の神経細胞が興奮状態になるためにおこり全般発作といいます。
これに対し高齢発症のてんかんの多くは脳の一部の神経細胞が興奮するもので、複雑部分てんかんに分類されます。代表的な症状は意識障害ですが、意識が完全に消失することはなく一点を見つめてぼーっとするもので転倒しません。発作中は話かけても無反応です。口をもぐもぐ動かしたり、舌をぺちゃぺちゃ鳴らす、貧乏揺すりのように足を小刻みに動かす、服や周囲のものを無意味に触ることもあり自動症といいます。このような動作をしていても本人には動かしているという意識はありません。発作は数分で終わりますがその後もうろうとした状態になります。
こうした発作が繰り返されると次第に記憶障害が出てきます。認知症の記憶障害は昔のことはよく思えていますが、高齢発症のてんかんでは思い出深い過去のことを忘れるのが特徴です。これらのてんかんの症状は本人には全く自覚がないため家族など周囲の方が気づき見つけてあげることが不可欠です。

てんかんの治療
治療しないでいると発作の頻度が増え記憶障害が悪化します。できるだけ早く神経内科、精神科などのてんかん専門医を受診してください。その際は発作時の様子をよく知っている方の同伴が必要です。スマホなどの動画があれば大変参考になります。てんかんの治療は抗てんかん薬といわれる薬剤で発作をコントロールすることです。大切なことは薬を飲み忘れないこと、勝手にやめないことです。薬は発作の回数を減らしているだけで、てんかん自体がなくなることではありあません。薬を飲み忘れたりやめたりして車の運転中に発作を起こし事故を起こすことは絶対にあってはいけません。

 

 ピロリ菌と胃がん  2019.12.24

ピロリ菌という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。胃の中は胃酸があるため細菌は住めないというのが通説でした。ところが1983年ウォレンとマーシャルが胃の粘膜にピロリ菌を発見しました。ピロリ菌は当初潰瘍の原因として注目されていましたが、その後胃がんや胃のリンパ腫、血小板減少といった病気と深く関わっていることがわかっています

ピロリ菌とは?

ピロリ菌はヒトの胃の中にいます。感染経路ははっきりしませんが経口感染とされていて母親からの子などの家庭内感染が疑われています。5歳までに感染するとずっと胃の粘膜に住み着きます。高齢者ほど感染率が高いですが、これは上下水道が整備されていない時代に幼少期を過ごしていたためと言われています。感染率は60歳代以上では昭和40-50年代は80%以上ですが平成初期には70%程度、平成20年代は40-50%に低下しています。現在の10歳代では5%程度ですから今後感染症者数は減少していきます。

ピロリ菌に感染すると胃はどうなる?
胃粘膜に炎症(障害)をおこし慢性活動性胃炎といいます。これが進むと粘膜がやせ衰える萎縮性胃炎になります。更に進むと腸に似た粘膜に変化し腸上皮化生といいます。ここまで来るとピロリ菌が住めなくなり菌は消失します。こうした課程で胃粘膜の細胞の遺伝子が傷つけられ胃粘膜の細胞が癌化します。胃がんの99%以上がピロリ菌感染が原因であり塩分・野菜不足・喫煙などが加わると更に危険になります。1994年WHOはピロリ菌が胃がんの原因と認定し2014年には胃がん対策はピロリの除菌とのコメントを出しています。

ABC検診 
ピロリ菌感染の有無を抗体で検出、消化酵素の元になるペプシノーゲンの量から胃の粘膜萎縮の程度を判定する検査です。A群は正常でピロリ菌陰性、ペプシノーゲンは正常、B群はピロリ菌はいるがペプシノーゲンは陰性(胃粘膜に萎縮は軽度)、C群はピロリ菌がいてペプシノーゲンは減少、胃粘膜の萎縮は進行、D群は高度の胃粘膜の萎縮のためピロリ菌が住めない(菌消失)状態です。
ABC検診は”胃がんのなりやすさ”を判定するもので胃癌そのものを見つけるものではありあませんので、これまでのバリウム検診や内視鏡検診とは全く異なります。

除菌の方法は1週間の内服薬  
胃酸を抑える胃薬1剤、抗生剤2種を1週間内服します(1次除菌)。約9割で成功しますが不成功例では抗菌剤を変えて2次除菌をします。また除菌後に胃粘膜が回復し胃酸が増えて逆流性食道炎(胸焼けなど)をおこすことがあります。

除菌しても胃がんになる危険はゼロにならない
除菌すると胃がんの発生に対する抑制効果は30%程度とされます。これは除菌してもこれまでの胃の細胞の遺伝子に傷が残るためで発がんの可能性は残ります。そのためA群以外では除菌が成功しても定期的な内視鏡検査が必要になります。

 

慢性便秘症  2019.10.21

便秘とは
排便に悩む人は少なく加齢とともに増えます。この便秘ですが ”本来体外に排出すべき便を十分かつ快適に排出できない状態 ”と定義されます。ですから1週間に1度でもおなかが張らずに快適に排便していれば便秘ではなく毎日排便があっても残便感ありすっきりしないときは便秘です。便秘は大腸の機能的な異常(動きがうまくいかない)にともなうために生じ排便回数が少ないタイプと便が硬くて十分でない排便困難の2つがあります。
便秘の治療・・・新薬の登場
ストレスや過激なダイエットで大腸の運動が低下すると便秘になるので治療には生活習慣を正すことが必要になります。ライ麦パン、豆類など食物繊維、ヨーグルトなど乳酸菌食品を摂るとうまく排便できます。
便秘薬は様々あります。刺激性下剤にはセンナ、アロエ、大黄を含む漢方薬、ラキソベロンなどがあり大腸の運動を刺激することで排便させます。浸透圧性下剤には酸化マグネシウム、ラクツロースがあり腸内の水分を増やすことで排便を起こします。
前述の2剤がこれまでの主流でしたが最近新しい下剤が加わりました。アミティーザとリンゼスは小腸粘膜に作用し腸内の水分を増やすことなどで排便させます。またグーフィスは小腸で吸収される胆汁酸をおさえることで排便を促します。これは発売されたばかりのため高価なことが難点です。また排便と姿勢の関係がわかっています。和式トイレの前屈み姿勢は直腸と肛門の角度が広がり排便しやすい姿勢とされています。洋式トイレでは便座に座ってから踵を上げるか足台を置いて足をあげ背筋を伸ばして35度前屈みになる、丁度 ”ロダンの考える人”のポーズになります。便秘の方は一度試してみてください。

 

 



スタッフから

 

あおもり県産品好き   2020.11.25

 最近、地元のニュースにもなっていた今月デビューした青森県初の淡水養殖サーモン

「青い森 紅(くれない)サーモン」の刺身を食べました

脂っこさがなくさっぱりとして、サーモン独特の臭みもないので美味しかったです

今はまだ、青森市内の限られた飲食店やスーパーにしか売っていないようですが、また食べてみたいです。

 

パン職人          2020.7.23

このコロナ禍の状況で自粛傾向が続いていますね。
私は6年前から独学でパン作りをしていますが、どちらかというと米派でつくることが好きなだけ。
なので作ったパンはほぼスタッフの口に入ります。
今では自家製酵母でパンを焼いて、色々とアレンジしながらつくっています。
こういうご時世で気分も落ち込み気味になりますが何か新しいことにもチャレンジしたいですね。

 

 2019年 ラグビーW杯    ヤマト    2019.10.30

9月より毎週末ラグビー中継で観戦応援してました。
日本戦は大変楽しく興奮しました。
台風19号の影響で釜石の試合は中止となりましたが、外国人チームが泥の除去などの手伝いをしているのには心打たれました。
決勝トーナメントで日本ベスト8! ワンチーム! 最高ですっ!