様々な病気をわかりやすく解説

 

 

微量ミネラルのお話                 2021.8.14

ヒトの体は多くの元素で構成されています。主要元素とよばれるものが酸素(O),炭素(C),水素(H),窒素(N)です。次いで多いのが準主要元素でナトリウム(Na),カリウム(K),塩素(Cl),カルシウム(Ca),リン(P),硫黄(S)、マグネシウム(Mg)があります。これより少ない元素が微量ミネラルとよばれ1日必要摂取量が100mg未満のものと定義されます。これはヒトの全重量の0.02%にすぎません。微量ミネラルには鉄(Fe),亜鉛(Zn),銅(Cu),クロム(Cr)、ヨウ素(I),コバルト(Co),セレン(Se),マンガン(Mn)などがあります。最近、生活習慣病や老化が微量ミネラルと関わっていることがわかってきています。

鉄はレバー、アサリ、赤身肉、大豆に含まれ欠乏により貧血になることで頭痛、めまい、倦怠感、集中力の低下を起こします。
亜鉛は牡蠣や豚レバー、ごまなどに含まれ欠乏すると口内炎、脱毛、味覚障害、食欲不振を生じます。
銅はタコ、カニ、エビ、牡蠣、大豆に含まれ欠乏症状は髪の毛の色素がぬける、倦怠感などです。
クロムは蕎麦、牛・鶏・豚肉、ホタテに含まれ脂質、タンパク質の代謝異常との関連がわかっています。
ヨウ素は昆布、海苔、イワシ、サバ、カツオの多く含まれ欠乏症状は脱毛、体力低下、倦怠感です。
コバルトは肉類、魚、乳製品に含まれ欠乏すると食欲低下、手足のしびれ、筋肉が萎縮します。
セレンはカツオ、ホタテ、ネギ、卵黄に含まれ欠乏すると脱毛、シミが増えます。
マンガンは海苔、シジミ、生姜に多く含まれ骨粗鬆症との関連が知られています。

これらの微量ミネラルの欠乏の原因は摂取不足や極端な偏食に伴うものです。症状に決定的なものはないため見逃されることが多いと思われます。正しい食習慣を保つことが予防になります。

 

子宮頸がんワクチンの現状     2021.4.29

子宮頸がんとウイルス
子宮頸がんは年間約1万人が罹患し約2800人が亡くなっていて特に50才未満の若い年代で増加しています。95%は性交渉に伴うヒトパピローマウイルスウイルス(HPV)の感染が原因です。HPVに感染してもほとんどは2年程度で自然に排除されますが一部では感染が持続し、その後感染した子宮頸部の細胞に軽い異常(軽度前がん状態)をおこし更に強い異常(高度前がん状態)を経てがんを発症することがわかっています。ただ普通の感染症と異なるのは感染してからがん発症まで数年から数十年かかることです。これはピロリ菌感染と胃がんとの関係に似ています。HPVには15種類ありその中でもHPV16型、18型が65%を占めます。

がん予防にHPVワクチン
ウイルス感染が原因ですからワクチンが発癌を予防できることは容易に理解できます。2009年16、18型HPVに対する2価のワクチンであるサーバリックス、2011年には6、11、16、18型対応の4価ワクチンのガーダシルが発売されました。2013年には小学6年生から高校1年を対象に無料の定期接種が開始されました。しかし、接種後の副反応が大々的に報道され2013年に厚労省は積極的な接種勧奨を中止、8割程度あった接種率は現在1%低下になっています。

HPVワクチンの安全性
HPVワクチンの副反応で問題となるのは“多彩な症状”とされる慢性の痛みや運動障害などです。これについて2016年の厚労省研究班、2017年の厚労省専門部会の検討ではいずれもワクチンとの明らかな因果関係はないと結論しました。しかし厚労省は現在でもワクチン接種の積極的勧奨はしていません。

 HPVワクチンの有効性と将来
最近スエーデンからHPVワクチンにより頸がんの発症リスクが6割減少すると報告され発がん抑制効果が明らかになりました。また今年2月に9価のワクチンのシルガード9が発売されました。これはガーダシルに加え31,33,45,52,58型に対応し88%のHPVをカバーします。ワクチンの1次予防と健診の2次予防でがん死をゼロにすることが期待できます。日本産科婦人科学会、日本小児科学会は厚労省に”積極的な接種勧奨”の再開を求めていますが実現されていません。

 

ヒートショックについて  2020.11.15

 ヒートショックは急激な温度変化で血圧が乱高下することによって起こる健康被害です。温度変化が急激に起こると血管が収縮して失神や不整脈を生じ脳卒中や心筋梗塞を引きおこします。厚労省研究班の実態調査(2013年)では年間19000人が亡くなっていると推計され年々増加しています。ヒートショックは寒い時期に多く、暖房のきいた暖かい部屋から寒いところに移ったときや逆に暖かいところから外に出たときに起こります。最も注意したいのが脱衣所や浴室、夜中や明け方のトイレに行ったときです。外気温が低くなる1月はヒートショックによる入浴中の事故死が増加します。ヒートショックを起こしやすいのは高齢者や高血圧や糖尿病、高脂血症などの動脈硬化が強くなる病気を持っている方です。高齢者は自律神経の働きが低下し温度変化の対応力が落ち影響を受けやすくなり浴槽での溺死は75才以上で特に多くなります。
ヒートショックを予防するには急激な温度変化を抑えることです。脱衣所やトイレ、浴室などに暖房器具をおいて居間や寝室などとの温度差を出来るだけ少なくします。入浴の湯の温度は41度以下、1回の入浴は10分以内にします。また食後1時間以内、飲酒後は血圧が下がるので、この時間帯の入浴は避けます。また高血圧の方はしっかり血圧を下げること、食生活や適切な運動、禁煙など生活習慣の改善も予防につながります。

 

 

高齢者のてんかん       2020.4.6

 てんかんというと突然けいれんを起こし意識がなくなる子供の病気というイメージがありますが、これは熱性けいれんという病気で一般的なてんかんとは違います。日本でのてんかんの患者さんは18歳未満が17%、18歳から64歳が39%、65歳以上が44%で高齢者が約半数をしめます。多くは高齢になった初めて発作をおこす高齢発症てんかんです。

高齢発症てんかんの特徴

てんかんは脳の神経細胞が過剰に興奮する病気です。突然、意識が消失し口をくいしばったまま、手足を伸ばした格好で全身を硬直するまたは曲げたり伸ばしたりする、呼吸が止まるなど一見してただならぬ状態になります。これは脳全体の神経細胞が興奮状態になるためにおこり全般発作といいます。
これに対し高齢発症のてんかんの多くは脳の一部の神経細胞が興奮するもので、複雑部分てんかんに分類されます。代表的な症状は意識障害ですが、意識が完全に消失することはなく一点を見つめてぼーっとするもので転倒しません。発作中は話かけても無反応です。口をもぐもぐ動かしたり、舌をぺちゃぺちゃ鳴らす、貧乏揺すりのように足を小刻みに動かす、服や周囲のものを無意味に触ることもあり自動症といいます。このような動作をしていても本人には動かしているという意識はありません。発作は数分で終わりますがその後もうろうとした状態になります。
こうした発作が繰り返されると次第に記憶障害が出てきます。認知症の記憶障害は昔のことはよく思えていますが、高齢発症のてんかんでは思い出深い過去のことを忘れるのが特徴です。これらのてんかんの症状は本人には全く自覚がないため家族など周囲の方が気づき見つけてあげることが不可欠です。

てんかんの治療
治療しないでいると発作の頻度が増え記憶障害が悪化します。できるだけ早く神経内科、精神科などのてんかん専門医を受診してください。その際は発作時の様子をよく知っている方の同伴が必要です。スマホなどの動画があれば大変参考になります。てんかんの治療は抗てんかん薬といわれる薬剤で発作をコントロールすることです。大切なことは薬を飲み忘れないこと、勝手にやめないことです。薬は発作の回数を減らしているだけで、てんかん自体がなくなることではありあません。薬を飲み忘れたりやめたりして車の運転中に発作を起こし事故を起こすことは絶対にあってはいけません。

 

 ピロリ菌と胃がん  2019.12.24

ピロリ菌という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。胃の中は胃酸があるため細菌は住めないというのが通説でした。ところが1983年ウォレンとマーシャルが胃の粘膜にピロリ菌を発見しました。ピロリ菌は当初潰瘍の原因として注目されていましたが、その後胃がんや胃のリンパ腫、血小板減少といった病気と深く関わっていることがわかっています

ピロリ菌とは?

ピロリ菌はヒトの胃の中にいます。感染経路ははっきりしませんが経口感染とされていて母親からの子などの家庭内感染が疑われています。5歳までに感染するとずっと胃の粘膜に住み着きます。高齢者ほど感染率が高いですが、これは上下水道が整備されていない時代に幼少期を過ごしていたためと言われています。感染率は60歳代以上では昭和40-50年代は80%以上ですが平成初期には70%程度、平成20年代は40-50%に低下しています。現在の10歳代では5%程度ですから今後感染症者数は減少していきます。

ピロリ菌に感染すると胃はどうなる?
胃粘膜に炎症(障害)をおこし慢性活動性胃炎といいます。これが進むと粘膜がやせ衰える萎縮性胃炎になります。更に進むと腸に似た粘膜に変化し腸上皮化生といいます。ここまで来るとピロリ菌が住めなくなり菌は消失します。こうした課程で胃粘膜の細胞の遺伝子が傷つけられ胃粘膜の細胞が癌化します。胃がんの99%以上がピロリ菌感染が原因であり塩分・野菜不足・喫煙などが加わると更に危険になります。1994年WHOはピロリ菌が胃がんの原因と認定し2014年には胃がん対策はピロリの除菌とのコメントを出しています。

ABC検診 
ピロリ菌感染の有無を抗体で検出、消化酵素の元になるペプシノーゲンの量から胃の粘膜萎縮の程度を判定する検査です。A群は正常でピロリ菌陰性、ペプシノーゲンは正常、B群はピロリ菌はいるがペプシノーゲンは陰性(胃粘膜に萎縮は軽度)、C群はピロリ菌がいてペプシノーゲンは減少、胃粘膜の萎縮は進行、D群は高度の胃粘膜の萎縮のためピロリ菌が住めない(菌消失)状態です。

ABC検診は”胃がんのなりやすさ”を判定するもので胃癌そのものを見つけるものではありあませんので、これまでのバリウム検診や内視鏡検診とは全く異なります。

除菌の方法は1週間の内服薬  
胃酸を抑える胃薬1剤、抗生剤2種を1週間内服します(1次除菌)。約9割で成功しますが不成功例では抗菌剤を変えて2次除菌をします。また除菌後に胃粘膜が回復し胃酸が増えて逆流性食道炎(胸焼けなど)をおこすことがあります。


除菌しても胃がんになる危険はゼロにならない
除菌すると胃がんの発生に対する抑制効果は30%程度とされます。これは除菌してもこれまでの胃の細胞の遺伝子に傷が残るためで発がんの可能性は残ります。そのためA群以外では除菌が成功しても定期的な内視鏡検査が必要になります。

慢性便秘症  2019.10.21

便秘とは
排便に悩む人は少なく加齢とともに増えます。この便秘ですが ”本来体外に排出すべき便を十分かつ快適に排出できない状態 ”と定義されます。ですから1週間に1度でもおなかが張らずに快適に排便していれば便秘ではなく毎日排便があっても残便感ありすっきりしないときは便秘です。便秘は大腸の機能的な異常(動きがうまくいかない)にともなうために生じ排便回数が少ないタイプと便が硬くて十分でない排便困難の2つがあります。
便秘の治療・・・新薬の登場
ストレスや過激なダイエットで大腸の運動が低下すると便秘になるので治療には生活習慣を正すことが必要になります。ライ麦パン、豆類など食物繊維、ヨーグルトなど乳酸菌食品を摂るとうまく排便できます。
便秘薬は様々あります。刺激性下剤にはセンナ、アロエ、大黄を含む漢方薬、ラキソベロンなどがあり大腸の運動を刺激することで排便させます。浸透圧性下剤には酸化マグネシウム、ラクツロースがあり腸内の水分を増やすことで排便を起こします。
前述の2剤がこれまでの主流でしたが最近新しい下剤が加わりました。アミティーザとリンゼスは小腸粘膜に作用し腸内の水分を増やすことなどで排便させます。またグーフィスは小腸で吸収される胆汁酸をおさえることで排便を促します。これは発売されたばかりのため高価なことが難点です。また排便と姿勢の関係がわかっています。和式トイレの前屈み姿勢は直腸と肛門の角度が広がり排便しやすい姿勢とされています。洋式トイレでは便座に座ってから踵を上げるか足台を置いて足をあげ背筋を伸ばして35度前屈みになる、丁度 ”ロダンの考える人”のポーズになります。便秘の方は一度試してみてください。